今年最後の日曜日、皆さん、いかがお過ごしですか?
釧路は気温は低いけど晴天でした♪
そんな中、朝からお風呂の大掃除をして朝風呂に入り
TVを観ながら、ちょっとウダウダしていたアタシです ^^;
さて、難しいタイトルで始まった今日の記事。
年の瀬、忙しい中…長文ですし、ちょっと難しいお話なので
興味のない方はスルーしてくださいね^^;
2009年9月 ある建築家が依頼主に訴訟を起こされ敗訴しました。
依頼主との『設計監理委託契約』を結び、設計監理業務をし、対価として報酬を得ます。
建築家というかどうかは…まぁ、人それぞれですけど(笑)
設計監理料金は、今まで施工費の10%というのが一般的な報酬金額でした。
なので、工事金額が増額すれば建築士の報酬金額も増額する。
工事費用が減額になれば、建築士の報酬金額も減額になる…
というような図式が有ったことは否定できない現実でもありました。
ただ近年、この報酬金額の算定方法が変わり、実際の作業量×時給(日給)
プラス、デザインや特殊技術などの能力への対価という算出方法への切り替えが
されてきており、また、建築士会でも推奨していますが法的根拠はありません。
依頼者の好みに予定金額を近づけるように色々とアイディアを提供し、悩み時間を
かけて考える作業をして減額したら報酬が下がるってのも変な話ですからねぇ^^;
櫻では8年前から、建物の工法や規模、用途によって設計料を算出してます。
で…最初の判決内容に戻りますね ^^;
このケースでは、依頼主から建物の予算5000万円以内で設計して欲しいと
打ち合わせを重ね、ラフプランを何度か考え直した中で、やはり…あれもこれも
というようなオプションが増えていき、それらを入れると予算内では難しいかも?
となったのだと思います。多分 ^^;
それを、依頼主にどのように説明したのかは分かりませんが…図面ができあがり
施工会社に見積りを依頼し、その工事金額はかなりオーバーしていたとのこと。
まぁ、依頼主がやりたいということを全て取り入れてから、減額をしていくか…
プランニング当初から、無理だと思われる部分を省きながら形にしていくか…
その進め方は人それぞれかと思いますけど、オーバーすることは多々あることで
普通はここから減額をするために、工法、材質等を色々と考え依頼主と話し合い
図面や仕様書、その他かかる経費の見直し及び変更をしていくのですけれど…
このケースでは、減額案を模索する以前に、依頼主からの契約解除要求が有り
プラス債務不履行による設計料全額返還の提訴となったわけです。
ん?債務不履行?ここで疑問。
何が建築士の「債務」なのでしょうか?^^;
この判決を言い渡した東京地方裁判所の見解では
建築士は予定金額内で建築できる建物を設計すること
これを、建築士の債務と考えたようです。
余談ですが…その建築士の手記によると、和解を勧めようとする裁判官から
設計なんて、紙っぺらにチョロチョロと絵を描いただけのもんなんだから
実費100万円ももらえれば、十分でしょ …と言われたというんです ^^;
これが本当だとしたら…この裁判官は知識が無さ過ぎると思いますし
司法の見解がこうだとすれば、今までの建築士による偽造問題など
あんなに法律を変えるような大きな問題にはならなかったはずです。
紙っぺらにチョロチョロと絵を描いただけで犯罪者になるんですから。
また、この裁判所の見解で、もうひとつ明らかになったことがあります。
それは、設計監理委託契約が一般的な「請負契約」にあたる ということ。
私的には、設計監理委託契約というのは委任契約だと思っていました。
請負契約:「仕事の完成」を目的とした契約
最大の特徴は、「仕事の完成」という「結果」に対する責任を負う、ということ。
一般的な工事請負契約…ちなみに、俳優業も請負契約だと言えるようです。
対して
委任契約:「一定の行為」の遂行を目的とした契約
最大の特徴は、「法律行為」などの、一定の行為について責任を負う、ということで
「善良な管理者の注意義務」すなわち受託者側の地位、職業などかに応じて
客観的に期待・要求されるレベルの責任を果たすべき義務 があるということ。
例えば、医師や弁護士、司法書士など「士業」といわれる分野に多い契約形態です。
といった時に、先述した東京地裁の裁判官は「請負契約」としたのです。
ですから、予定工事金額で完成できなかった=債務不履行という考えです。
お施主さんの要望は、得てしてわがままなものです。
お施主さん自身は、自分のやりたいことにいくらくらいかかるのか?を知りません。
それは当然のことですし、だからこそ、設計事務所の戸を叩くのだと思います。
希望の予算の中で、その多くの要望を全て満足させるというのは難しいこと。
そこで、最初から省いて考えるか、それともとりあえず全ていれた状態で見積もって
その後、調整していくか…というのはケースバイケースなんです。
多分、この建築家は後者に近い形で進めたのでしょう。
そこまで至る期間、約1年間。
その間に描いた図面、打合せの時間…調べたこと、準備期間、その他諸々…
設計が全て完結していたわけでは無く、減額という作業が残された道半ばでの
既に支払った設計料金を含む全てのお金を返還せよという裁判所からの判決。
これって、どうなんでしょう。
確かに、前述した報酬金額の決め方などを見ていると請負と言っても
おかしくは無いし、まぁ、結果的な事が全てというのも頷けますし…
それに、依頼者が施主なのか、施工会社なのかで、性質も変わると思います。
また、このケースでの依頼者と建築士のコミュニケーションがどうだったのか
ということも全く分からないので、その部分では何とも言えませんけれど…。
形や大きさは同じでも、工法や性能、設備や使用材料の仕様の違いによって
工事金額の安い高いが大きく変わることが多いのが建築というもの。
それを、道半ばにして契約書に書かれている金額で納まらなかったから
デザインを考え、機能や性能を考え、施主の要望と予算を考慮しながら
一生に一度のことを施主の立場に立ってお手伝いする建築士という仕事。
施主と建築士はコミュニケーションをとって、全てを話し合って決めていく。
『一緒に家づくりをする』という感覚が無いと難しいんだなぁ~と再認識。
この建築家は、最高裁で棄却され判決確定したわけですが
再審請求の道を探したいとのことでした。
それにしても…あの和解を勧めた裁判官の言葉。
もし、あれが本当なら…ぶっ飛ばしてやりたいアタシです(爆)
長文にお付き合いくださり、ありがとうございました!