能登の地震から早23日。
被災された皆さんが大変な思いをされていると思うと胸が痛みます。
大きな地震後、建物の危険度を判定する「応急危険度判定」という作業が有ります。
人間のトリアージと同様、建物が安全か危険かを判定するもので、応急危険度判定士という資格を持った建築士が現地に入って調査をします。
今回、北海道建築士会からの要請で登録している建築士に募集がかかりました。
もちろん、私も登録しているので何かしらお役に立ちたいと思ったのですが、災害直後はかえって足手まといになることを考えて第一陣には応募しませんでしたが、北海道からは十数名の方が現地に向かうと聞いています。
ニュースで、判定の赤い紙が貼られた建物から荷物を運び出している方の映像が有りました。赤い紙は「危険」という判定で、倒壊している、若しくは東海の恐れのあるものということで、人の立ち入りは基本的にはダメというものです。
でも、仕方ないですよね…いくらかでも財産や思い出を持ち出したいという気持ちは分かります。せめて、入る時には専門家に相談してからにしてほしいと思います。
赤の他には、黄色、緑色があり、黄色は使用はできず、立ち入る際には十分に注意すること。緑色は調査が終了した威容可能な建物ということです。
地震の映像で多く見られるのは、1階(若しくは下層階)が押しつぶされるように崩れてしまう「パンケーキクラッシュ」という現象で、今回の地震でも多く発生しているようです。
ビルなどで1階が駐車場(ピロティ―)だったりした場合、強度が弱くその層が潰れてしまったり、木造でも1階が店舗だったりして柱や耐力壁が少ないような状況だとなりやすい現象です。
住宅でも1階に広いリビングがある場合、どうしても強度的に弱くなってしまうことがあるので、そういった場合には考えられる現象となります。
加えて、本州の場合は古い住宅の場合は瓦屋根が多く、屋根荷重が大きいのも要因の一つかもしれません。
また、今回は古い建物が多い地域だったのも被害が大きくなった原因です。
大きく分かれるのは、昭和56年の構造指針の法改正の前に建ったか後に建ったかというところで、後に建ったものは震度6の地震には耐えられるとなっています。
その後、阪神淡路大震災を経て、平成12年に地耐力が求められるなどして現在では震度7にも耐えられるくらいの基準になっています。
加えて省エネ基準も段階的に上げられていて、来年、2025年4月ころからは、木造住宅も省エネ基準をクリアして、尚且つ、今までは建築士の責任で省略されていた構造設計についてもクリアしないと確認申請がおりなくなります。
震災を経験するたびに厳しくなる構造基準ですが、それでも地震で大きな被害がでてしまうのは何故でしょうか。
釧路でもそうですが、高齢者が住んでいる古い建物がたくさんあります。住んでいなくて放置されている古屋も多く存在します。
市町村や道(県)などでは、住宅の耐震化に対する補助金がありますが、金額的に「調査費用」くらいにしかならないというのが現実。そこから耐震補強工事をするとなると、かなりの工事費用が必要となってしまいます。
「自分たちが最後」と思うと、耐震補強の工事をする気にはならない…というのが本音でしょう。だから、耐震化が進まないまま時だけが過ぎといきます。
地方都市はどこでも同じような状況なのではないでしょうか。
阪神淡路大震災のとき、建造物による圧死や窒息で亡くなられた方が全体の8割近くいたと聞きます。今回の能登地震でも、もしかすると同じような数字かも知れません。
どうにか、この建物によって亡くなるということを防ぐことはできないものか。
建物を強固にすることと同時に、供給の仕方、住み方のシステムを変える必要があるんじゃないのか?と、漠然とですが個人的に考えたりしますが難しいですね。
あらめて、犠牲になられた方のご冥福をお祈りすると共に
被災された方に心からお見舞いを申し上げます。